2019年4月から施行された「働き方改革法案」。
この法案によって残業時間の上限が月45時間以内、年間360時間までとなりました。
これを機に世の中も業務削減の動きが加速して、ホワイト企業かどうか見極めの1つとして残業時間の短さが挙げられます。
これまで営業というと残業も多い激務とされていましたが、営業も残業時間を減らしてワークライフバランスを重視するように変化しています。
実際に営業の求人を見ても、「残業ほぼなし」「残業10時間以内」と記載されているものも増えています。
実際、今の営業の残業時間はどうなっているのか調査しました。
残業の多い業種、少ない業種ランキング!営業は何位?
dodaが20代~50代15,000人におこなったアンケートによると、全体の1か月あたりの平均残業時間は20.8時間でした。
10年前の2012年に同じ調査をした際の1か月あたりの平均残業時間は28.6時間だったので、働き方改革法案のおかげで全体的に残業時間は大幅に削減されていることがわかります。
その中でも残業時間が少ない業種ランキングは、下記になります。
【残業時間が少ない業種ランキング】
1位 秘書/受付 | 10.5時間 |
1位 医療事務アシスタント | 10.5時間 |
3位 営業事務アシスタント | 11.1時間 |
4位 金融業界の代理店営業 | 11.4時間 |
5位 一般事務アシスタント | 11.8時間 |
6位 金融事務アシスタント | 12.3時間 |
7位 経理/財務事務アシスタント | 12.5時間 |
8位 薬事 | 12.6時間 |
9位 金融業界の個人営業 | 13.4時間 |
10位 MR | 13.7時間 |
こうしてランキングを見ると、事務系の仕事は比較的残業時間が少ない傾向にあります。
また金融の営業やMRなども残業時間が少ないランキングに入っています。
MRは以前は残業が多いことで有名でしたが、この10年で残業が少ないランキングに入るほどまでに残業時間が減っています。
次に下記は平均残業時間の多い職種ランキングになります。
【残業時間の多い職種ランキング】
1位 設計監理/施工管理/コンストラクションマネジメント | 38.3時間 |
2位 プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/web/映像関連) | 32.5時間 |
3位 施工管理 | 31.8時間 |
4位 建築設計/デザイン/積算/測量 | 29.8時間 |
5位 人材サービスの営業 | 29.2時間 |
6位 電機メーカーの営業 | 28.6時間 |
7位 機械設計/金型設計/光学設計 | 28.5時間 |
8位 組み込みエンジニア | 28.3時間 |
9位 経営企画/事業企画 | 28.3時間 |
10位 インフラコンサルタント | 28.1時間 |
何かを作り上げるような仕事だったり、管理するような仕事はどうしても残業が多くなりがちなようです。
10位のうち営業職は、人材サービス営業の29.2時間、電機メーカーの営業28.6時間の2つだけでした。
人材サービスは、スタッフの終業後に面談や打ち合わせが入ることもあるため、どうしても残業時間が多くなりがちです。
参考までに、10年前の営業の平均残業は、建築/不動産の営業が41.9時間、広告/メディアの営業が40.5時間、MRが38.8時間だったので、この10年で営業の残業も全体的にぐっと減ったことがわかります。
ただ、2021年はコロナの営業で外回りの営業が思うようにできなかったり、リモートワークやオンラインでのミーティングが進んだりしたことも残業が減った要因の1つと思われます。
コロナが収束して以前のように外回りができるようになると、また少し変わってくるかもしれません。
(参照:doda 平均残業時間の少ない仕事・多い仕事は?90職種別の残業時間ランキング
営業に残業が多い理由3つ
他の職種と比べてどうして営業職は残業が多くなりがちなのでしょうか。
その原因は3つあります。
1.業務内容が多岐に渡り時間内に終わらない
営業は、顧客の外回りだけではなく、提案書を作成したり伝票の入力や発注作業など事務作業も意外と多い職種です。
また、営業をおこなうために地域のリサーチをしたり、マーケティング調査をおこなうこともあり、業務が多岐に渡ります。
ところが、営業は日中顧客先への訪問など外回りにほとんどの時間を費やすため、資料作成などの事務作業はどうしても帰社後になってしまいます。
業務内容が多すぎて残業をせざるを得ません。
2.ノルマ達成のために残業や休日出勤をしてしまう
営業はどうしてもノルマが重視されます。
ノルマを達成していなければ残業や休日出勤してでもノルマを達成しようとしてしまう営業マンが多いのも事実です。
また、古い体制が残っている会社の場合、ノルマが達成していないと定時で上がりにくい雰囲気があるためつい残業してしまうという声も上がっています。
3.営業は顧客優先のため時間外のアポイントも引き受けてしまう
営業職は業績をあげるために自分の都合より顧客を優先しがちです。
顧客から時間外にアポイントを提案されても断ることができずについ引き受けてしまいます。
そのため残業や休日出勤をすることになってしまいます。
残業なしの営業を目指そう!残業を減らすには転職先の選び方が重要
営業職も残業を減らす方向へと大きくシフトしています。
営業はお客様あってのものなので、何かあればお客様の元に駆けつけることもあり、全く残業なしというのは厳しいですが、転職先の選び方によって残業時間を今よりも減らすことは可能です。
仕事もプライベートもどちらも充実させたい人は、残業が少ない業種の営業職を選ぶことをおすすめします。
残業に厳しい大手企業の営業の求人に応募する
大手企業であるほどコンプライアンス遵守に厳しくなっていて、残業もしづらい環境になっています。
下記は営業職の残業が少ない企業のランキングです。
上位5つの企業はどれもみんなが知っている大手企業です。
また、残業が少ない業種でも入っている金融系の企業が多くランクインされています。
【営業職の残業が少ない企業ランキング】
企業名 | 平均残業時間(月) |
---|---|
1位 リコージャパン | 10.5時間 |
2位 日本郵便 | 10.8時間 |
3位 日本生命保険 | 16.5時間 |
4位 大和証券 | 17.3時間 |
5位 三菱UFJ銀行 | 20.8時間 |
(2018年 グローバルウェイ調べ)
大手企業には内部調査チームやコンプライアンス部が配置され、長時間労働だけでなくパワハラやセクハラ、業務違反は個人情報の取扱いなど法令違反がないようにチェックが入ります。
残業が多い部署は指導が入ることもあり、上司に申請をしなければ残業ができない会社もあります。
他にも週に1~2回程度でノー残業デーを設けている会社も多く、中には終業と同時に電気を落とすところもあるそうです。
大手企業ほど会社全体で残業をしないような雰囲気を作っています。
残業が少ない職種の営業を選ぼう
大手企業は残業も少なく福利厚生も充実しているため、求人が出ても人気が高く激戦です。
大手企業ではなくても、営業職の少ない業種の企業に転職するのもおすすめです。
営業職の中でも残業の少ない職種を下記にまとめました。
◆金融系の営業
金融系は10年前のランキングでも営業職の中でも残業が少ない業種として挙げられており、時代に問わず営業系の中では残業が最も少ない業種として知られています。
金融系は大企業が多く、またコンプライアンス遵守に厳しい業界でもあります。
そのため社員の勤務状況もしっかり管理されており、残業に対して厳しい姿勢が取られているところが多い傾向にあります。
◆MR
10年前のMRの平均残業時間は38.8時間でした。
昔のMRは接待全盛期といわれているほど、勤務後に取引先の医師との接待が盛んにおこなわれていたからです。
今ではMRの接待は禁止されており、接待をおこなうことができません。
今のMRで接待を行っている営業マンはまずいないでしょう。
また2019年に「販売情報提供活動に関するガイドライン」が制定されて、厚生労働省からMRが売上至上主義によらない人事評価制度や報酬体系に改めるように求められました。
働き方改革も後押しして、MRの労働環境がぐっとよくなり、今では残業時間が少ないランキングに入るほどになっています。
◆介護系営業
介護系営業は残業が多いと思われがちですが、意外と営業職だけでなく介護業全体が残業時間少なめの業種です。
介護系の営業は基本的にケアマネージャーへの訪問が主な仕事です。
ケアマネージャー自体残業が少ないので、介護系の営業も基本的に定時に上がれることの方が多いです。
営業職の残業を減らすためには
残業時間は自分で減らす努力も大切です。
また誰かが帰らないと帰りにくい雰囲気がすでに出来上がっているなら、自ら定時に終わらせてその雰囲気を変えることも試してみましょう。
またあまりにも残業が多い会社なら、根本的な改革も必要かもしれません。
上司や管理者に提案してみることもおすすめです。
無駄な残業はしない
周りが帰らないからなんとなく残っている、明日の仕事だけど今日このまま残ってやっていってしまおう、などしなくてもいい残業をしてはいませんか?
残業をする前に、この仕事は本当に残業をしてまでやらなければいけない仕事か見直しましょう。
上司に残業削減を提案してみる
法定で定められている45時間ギリギリになるまで残業させている会社なら、上司や管理者に残業削減を提案してみることも大切です。
残業を減らすには、会社全体の雰囲気や方向性を変えることも必要になります。
ノー残業デーを1週間に1日作るなどすぐに取り入れられそうなことから提案してみると受け入れてもらいやすいです。
仕事にメリハリをつける
その会社の繁忙期には、どうしても残業をしないと業務を終わらせられないこともあると思います。
その代わり繁忙期以外はなるべく残業をしないなど、働き方にメリハリをつけましょう。
メリハリをつけることで、繁忙期も乗り越えることができます。
まとめ 今後は残業なしの営業職が増える可能性も
働き方改革によって、10年前と比較すると残業時間はどの業界も減少傾向にあります。
企業もワークライフバランスを重視するようになっていて、時短勤務やテレワーク、フレックス制度などの導入が進んでいます。
また、コロナの営業でリモートワークやオンラインミーティングが当たり前になり、足を運ばなくても顧客と打ち合わせが可能になりました。
今後もこういったIT技術によってこれまでかけてきた時間を削減でき、残業時間を減らすことができるようになるでしょう。
残業なしの営業職も今後増えていくかもしれません。