営業職だと残業代がつきにくいというのは事実です。
特に、営業職の場合は自社のみではなく外回りで仕事をしていることが多く、その点から残業代をつけにくいという背景もあります。
しかし、営業職だからと言って残業代を請求できないという法律はありません。
そこで、この記事では営業職だとなぜ残業代がつきにくいのか、営業職で残業代をつけにくい背景には何があるのかについて詳しく紹介していきます。
それではみていきましょう。
営業職だと残業代が出にくい3つの理由
営業職だと残業代が出にくい理由は、以下の3つです。
- 営業手当がついていることが多い
- 勤務時間を正確に計測しにくい
- インセンティブ報酬がある
営業手当がついていることが多い
営業職でも残業した場合は残業代をつけることは可能です。
しかし、会社によっては営業手当がついていることもあり、それによって残業代が実質相殺されていると考えることもあります。
特に、大手企業の場合は営業社員に対しては、内勤スタッフにはない高額の営業手当がついており、それが実質的な営業職の残業代になっていることが多いです。
このような背景から会社に対して残業代を請求しにくいという背景もあるでしょう。
営業手当は会社によって異なりますが、5万円から10万円程度つくこともあります。
大手企業の場合、役職によっては月10万円以上つくことも多いです。
そのため、コーポレートなどの内勤スタッフとの給料の差が大きくなるのも事実です。
勤務時間を正確に計測しにくい
営業職に残業代がつきにくい背景として勤務時間を正確に計測しにくいことがあげられます。
営業職であってもテレアポやインサイドセールスの場合は、社内から営業活動を行うことができるので、出勤時間や退勤時間を社内で管理することが可能です。
一方で、営業で外回りにでている場合は、出勤時間や退勤時間を正確に管理できないことがあります。
特に、自宅からそのまま営業先に向かう場合、いつ出勤したのか、またいつ退勤したのかは社員の報告のみになります。
そして、営業職で外回りをしている場合、休憩は比較的自分のペースで取りやすいという背景もあるでしょう。
このような背景から、勤務時間を正確に計測しにくく結果的に残業代を請求しても、残業代が認められないという声も多いです。
しかし、中には勤務時間を正確に把握することで営業職であっても残業代をつけている場合があります。
ただし、その場合はGPSで常に位置を確認されていたり、細かな報告が必要になることも多いです。
インセンティブ報酬がある
営業職で残業代が付かない背景にはインセンティブ報酬があげられます。
インセンティブ報酬とは、自分が契約した数に応じて売り上げの数%を給料に上乗せしてもらえる制度のことです。
この制度が設けられているのは営業職だけのことが多いです。
そのような背景から、営業職の場合は残業代が付かないということがあるでしょう。
また、営業職の場合、インセンティブ目当てで積極的に残業する人が多いという背景もあります。
インセンティブのある営業の場合、自分が契約した本数がそのまま自分の報酬として返ってくることになります。
そのため、残業してでもクライアントのために仕事をして、契約締結まで漕ぎ着けたいと思っている人も多いでしょう。
また、なかには自ら積極的にクライアントと休日にゴルフなどに行って交流を深めることもあります。
特に、外資系の生命保険会社などはクライアントとの関係を築くために休日であっても仕事をすることが多いです。
このような働き方を自ら好んで行っている人が多いのも、営業職で残業代をつけられない、残業代をつけられる雰囲気ではない背景にあるでしょう。
営業職の業務時間に含まれるもの
営業職の業務時間に含まれるものは、以下のものです。
- クライアントとの商談時間
- 外回りの移動時間
- 営業資料の作成時間
クライアントとの商談時間
営業職の勤務時間のメインになってくるのがクライアントとの商談時間です。
販売している商材や営業方法によっても異なりますが、毎日複数件のクライアントを訪問することがあります。
訪問時には、クライアントに対して提案であったりアフターフォローしていくのが営業職の仕事です。
このような仕事は営業職のメインの仕事と考えられており、業務時間にも含まれます。
そのため、クライアントの都合で商談時間が自社の就業時間後になった場合、もしくは1日の所定労働時間を超えた場合は残業代を請求できることが多いでしょう。
外回りの移動時間
営業職の勤務時間には、外回りの移動時間も含まれます。
ただし、ブラック企業と呼ばれる会社の営業職では、外回りの移動時間は休憩時間になってしまい、労働時間に含まれないということもあります。
しかし、労働基準法では外回りの移動時間であっても勤務時間に換算することが可能です。
これは、移動時間であっても身体を拘束されている時間には変わりないためです。
そのため、自社から遠いクライアントを訪問して帰宅するのに時間がかかった場合、移動時間も残業代として請求する事が可能です。
営業資料の作成時間
資料の作成時間も業務時間に含まれます。
特に、営業職の場合、自宅で営業資料を作成するということも多いでしょう。
自宅で作業をしてしまうと隠れ残業という形になってしまい、会社に対して残業代を請求するのは難しいです。
ただし、自社に戻って会社の中で資料作成をしている場合などは、残業時間として請求できることが多いです。
また、会社からの指令のもとで自宅で作業をするように命じられた場合は、自宅で資料作成をした場合でも残業代を請求できる可能性が高いでしょう。
営業職が残業代を請求する際に行う3つのこと
営業職が残業代を請求する際に行うことは、以下の3つです。
- 業務時間を正確に記録する
- 給与形態を確認する
- 会社とのすり合わせを行う
業務時間を正確に記録する
営業職であっても残業代を請求したい場合は、業務時間を正確に記録することが必要です。
業務時間では、規定の業務時間だけではなく、実際に自分が仕事をした時間が重要になってきます。
例えば、就業時間が10時からであっても実際の出社は8時半から求められている場合、8時半から業務を開始していたと考えられるでしょう。
また、自宅で残業した場合はそれらの時間も正確に記録しておくことで、後々残業代を請求しやすくなると言えます。
業務時間を記録する際には、何をしたのかも一緒に記録しておくといいでしょう。
例えば、会社からの指示のもとで行われる業務であれば、自宅で行なっていても残業と認められる可能性が高いです。
一方で、自己啓発など自分が自発的におこなったもの、もしくはインセンティブ目的で業務を自らおこなっている場合、会社からの指示ではないと考えられる可能性も高く、業務時間として換算できない可能性があります。
このような背景から、業務時間をただ記録するだけではなく、どのようなことを行ったのかや、その業務が発生した背景もわかるようにしておくと、より残業代を請求しやすいと言えるでしょう。
給与形態を確認する
業務時間を正確に記録した後は給与形態を確認することが重要です。
会社によっては、固定残業制もしくは裁量労働制などを導入している場合があります。
固定残業制の場合は、あらかじめ数10時間の残業代がついた上で、給料支払いという形になっています。
例えば、固定残業50時間の場合は毎月支給される給料の中に50時間分の固定残業代が入っているという認識です。
そのため、50時間分の残業については会社は残業代を追加で支払わなくても良い契約で、そもそも入社していることになります。
一方で、50時間を超えた場合の残業時間については、残業代を請求することが可能です。
裁量労働制は、業務の柔軟性を確保するための給与形態の一つで、ある程度自分のペースで働ける代わりに残業代などがつけられない制度になります。
そのため、裁量労働制で契約している場合は残業代を請求するのは難しいかもしれません。
ただし、営業職の場合は一部の特殊な営業職をのぞいて裁量労働制をそもそも適用できないという認識になっているので、裁量労働制が適用されているにもかかわらず一般的な営業を行っている場合は、契約自体がおかしいことも考えられます。
その他に考えられるのが、正社員ではなく個人事業主として契約している場合です。
個人事業主として業務委託の形で会社と契約している場合は、そもそも残業代を請求することができません。
業務委託の場合は、会社には管理責任がないので、労務時間を管理する義務がなく、残業の有無に関係なく規定の報酬を支払えば会社の義務を果たしていることになります。
保険営業は、業務委託の形で契約していることも多く、自由に仕事ができる代わりに残業代などを請求する権利がそもそもないということも多いです。
この場合は、残業をしたからと言って会社に対して残業代を請求するのは難しいでしょう。
会社とのすり合わせを行う
残業代を請求する際には、最後に会社とのすり合わせが必要になってきます。
残業代未払いの背景には、会社と個人の認識の違いなども含まれます。
そのため、会社と認識をすり合わせることで残業代を受け取れる可能性があります。
特に、大手企業の場合は残業代を支払わないことでトラブルになり、外部に情報が漏れるよりも、内部で穏便に済ませた方が良いと考える企業も多いです。
そのような背景から、交渉次第では残業代をもらえる可能性もあります。
また、この際には個人で交渉するのではなく弁護士などを入れた方が、よりスムーズにいくと言えるでしょう。
まとめ
営業職では残業代を請求しにくい雰囲気があるのも事実です。
ただし、営業職だからと言って残業代を請求する権利がないわけではありません。
そのため、残業代について気になることがあれば、会社や弁護士に相談してみるといいでしょう。