近年におけるインターネットや通信設備の需要拡大による技術者不足の深刻化により令和元年に新しく誕生したのが電気通信施工管理技士です。施工管理技士の任務は環境保全などを踏まえながら工事現場において「品質の確保」「安全の確保」「期限内での完成の確保」の管理項目を計画して実施、検討、処置を行い目標物を完成させることです。今日は電気通信工事施工管理技士の試験の詳細と仕事内容を紹介します。
電気通信工事施工管理技士とは
電気通信工事施工管理技士は固定電話、携帯電話、インターネットなどの通信設備工事の専門家です。
電気通信工事施工管理技士になるには、国土交通省管轄の国家資格の取得が必要です。1級と2級があり2つの違いは従事できる現場範囲です。
1級では従事できる現場の範囲が広くなります。試験の合格率は令和3年度の試験では1次試験ではおよそ6割、2次試験ではおよそ3割です。1次試験の合格で「技師補」2次試験の合格で「技士」の資格が取得できます。1次試験(学科)と2次試験(実地)です。2級の1次試験以外は実務経験が必要です。勉強方法はテキストを使用するほか通信講座もあります。
合格者は「電気通信工事施工管理技士」となり、建設業法上の関係業種の許可に際して営業所ごとに置かなければならない「専任技術者」や1級では工事現場ごとに置かなければならない「監理技術者」2級では電気通信工事の「主任技術者」として従事できます。
電気通信工事施工管理技士試験について
受験資格
2級
1次試験(学科):受検しようとする年度中での年齢が17歳以上であること
2次試験(実地):実務経験が必要です。学歴によって受験に必要な期間が異なります。
学歴 | 気通信工事施工に関する実務経験年数※1 | |
指定学科の卒業者※2 | 指定学科以外の卒業者 | |
大学・高等専門士 | 卒業後1年以上 | 卒業後1年6月以上 |
短期大学・専門士 | 卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校・中等学校・専門学校 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 |
その他 | 8年以上 | |
電気通信事業法による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者 | 1年以上 |
参照元:2級電気通信工事施工管理技術検定 | 一般財団法人全国建設研修センター
※1電気通信工事施工管理に関する実務経験として認められない主な工事種別・工事内容等
※2指定学科とは電気通信工学・電気工学・土木工学・都市工学・機械工学・建築工学に関する学科です。
詳細は下記の一般財団法人全国建設研修センターの指定学科についてのページを参照ください。
1級
1次試験(学科):下記の表を参照(注)務経験年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること
2次試験(実地):1級1次試験の合格者(1級2次試験の受験資格の詳細は一般財団法人全国研修センターのHPを参照ください)
学歴 | 電気通信工事施工に関する実務経験年数※1 | |
指定学科の卒業者※2 | 指定学科以外の卒業者 | |
大学・高等専門士 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 |
短期大学・専門士 | 卒業後5年以上 | 卒業後7年6月以上 |
高等学校・中等学校・専門学校 | 卒業後10年以上※3 | 卒業後11年6月以上※3 |
その他 | 15年以上 | |
電気通信事業法による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者 | 6年以上 | |
2級の2次試験合格者 |
参照元:1級電気通信工事施工管理技術検定 | 一般財団法人全国建設研修センター
※1電気通信工事施工管理に関する実務経験として認められない主な工事種別・工事内容等
※2指定学科とは電気通信工学・電気工学・土木工学・都市工学・機械工学・建築工学に関する学科です。
詳細は下記の一般財団法人全国建設研修センターの指定学科についてのページを参照ください。
※3実務経験内容によって2年期間を短縮できる場合があります。
試験科目
電気通信工学、電気通信設備知識、関連分野、法規、施工管理法など
引用元:国土交通省HP「電気通信工事施工管理技士に求められる知識と能力」より
合格率
引用元:国土交通省HP
・報道発表資料:令和3年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表 – 国土交通省
・令和3年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定「第一次検定」合格者の発表~初の1級技士補が誕生!~ – 国土交通省
電気通信工事施工管理技士の仕事内容
電話やインターネット、Wi‐Fiなどの通信設備を使用できるようにすることです。通信系の弱電設備工事と強電設備の配線工事の2つに分かれます。おもな仕事は配線工事です。近年では一般家庭でも必要な工事となりその需要は年々高まっています。
具体的にはLANケーブルの設置、基地局の設置、電波障害の調査と解消、施工管理などです。
ここでは電気通信工事施工管理技士の行うおもな工事を7つ紹介します。
1.LAN工事
LANは建物内やフロア内など限られた範囲内のコンピューターで構築するネットワークです。
LANには有線LANと無線LANがあります。有線LANではLANケーブルを使用してネットワークに接続します。無線 LANでは電波で無線接続します。
LAN工事ではLANケーブルを配線してパソコン・プリンター・電話のほかセキュリティ設備を接続します。このほかWi-Fiの設置やネットワークの設定と光ケーブル工事があります。LAN工事を行う事でデータを共有できます。離れた場所にあるLAN同士をつなぐネットワークのことをWANといいます。拠点間のネットワーク接続に必要な工事です。
2.電話工事
電話工事は「新設工事」「移設・移転工事」「増設工事」「修理・保守」があります。
屋外作業と屋内作業があります。屋外作業は電柱から電話線を屋内に引き込む工事です。屋外作業は電柱での高所作業です。屋内では室内に引き込んだ電話線を室内の電話機まで配線します。
オフィスで内線電話を利用する場合にはPBX(構内交換機)を設置します。PBXから室内への配線と電話機の設置も合わせておこないます。
3.携帯電話基地局の設置工事
モバイル端末(携帯電話やスマートフォンなど)に効率よく電波を届けるための基地局の設置工事です。 配管ルートなど測量とシミュレーションをもとに設計図面を作成します。屋外・屋内基地局の建設では電源設備と無線機器の設置も行います。そのほかアンテナから無線機までのフィーダー線の敷設と光回線の接続、電波不感地帯の解消・通信試験などをおこないます。
4.放送設備工事
建物や施設で情報伝達に使用される放送設備の設置工事です。公共施設や商業施設、学校や病院・店舗など一定の収容人数がある建物には消防法により設置が義務付けられた設備です。放送設備は非常放送設備や緊急放送設備のほかに一般業務放送設備、舞台・劇場の音響設備、 AV機器設備・会議室放送設備など用途によって種類があります。工事はシステム図面の作成から始まり建物全体への配線と各機器への接続をおこないます。システムの設置後にはマイクやスピーカーなど各種機器の動作チェックをおこないます。
5.テレビ共聴設備工事
マンションやビル内へ配線して各部屋でテレビが見られるようにする工事です。
受信アンテナを設置して増幅器と分岐分電盤に接続します。テレビ端子を接続して調整と映像の確認をおこないます。そのほかには地デジ受信設備工事や電波障害エリアと言われる山間部と人口密度の低い地域へ電波の共同受信施設を構築する工事もおこないます。
6.その他の設備機器設置工事
病院のナースコール、集合住宅のインターホン、公共施設や商業施設などの防犯カメラなどの弱電設備機器の設置工事をおこないます。
7.施工管理
上記のような作業とは別に施工管理をおこなうのも施工管理技士の仕事です。具体的には工程管理・原価管理・品質管理・安全管理の4つです。正しく現場を管理することで完成品は高品質になります。工程管理は目標の期日までに完成するように作業を調整管理することです。原価管理は予算内で工事を完了するよう必要な費用を調整管理することです。品質管理は仕様書で求められた品質をクリアしたうえで法令で定められた条件も満たすように管理調整することです。安全管理は工事に関わる全員が怪我をすることのないよう作業員を含めた工事現場を管理することです。朝礼や作業前の手順の確認、使用する道具のメンテナンス、危険察知訓練、危険区域への立ち入り禁止の表示などを行い、作業員の安全を確保します。
電気通信工事施工管理技士のメリットとデメリット
ここでは電気通信監理施工技士の仕事のメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
メリット
・完全未経験から1年6カ月で資格が取得できる
指定学科卒業後に1年6カ月の実務経験を積むことで受験できます。資格取得後は建設現場に必ず配置が必要な主任技術者や管理技術者になることができ、若いうちから経験を積むことで専門性を高めることができます。
・最新技術にふれられる
インターネットの高速化と大容量化が進む現在では、これまで通信を必要としなかったテレビやエアコンなどの身の回りの機器もネットワークに接続されるようになりました。次世代通信技術6Gの研究開発も進んでいることから今後ますますの発展が見込まれます。
・転職に困らない
IoTの広がりにより身の回りのものあらゆるものがネットワークに接続されています。都市の課題をICTで解決するスマートシティの取り組みも始まっていることから工事技術電気通信者の需要は今後も増加していくことが予想されます。
・やりがいがある
専門職は知識と経験に加え技術が必要です。だれもができる仕事ではありません。
電気工事をおこなう設備は生活に欠かすことのできないものです。人々の生活を支えていることを実感できる仕事です。
デメリット
・覚えることが多い
インターネット通信は需要拡大を続けていて技術更新が早いです。新技術に対応するための情報収集と勉強が欠かせない仕事です。また未経験から仕事を始める場合には通信技術の基礎や判断基準など現場でしか学べないことが多くあります。仕事に慣れるまではそのぶん負荷が大きくなります。
・体力が必要
デスクワークではないために基本的には立ちっぱなしで作業します。また工具を持って動き回る必要があります。工事の準備では資機材の搬入があり大規模な工事ほど搬入物は多く、重くなります。高所作業でも工具を持って登る必要があります。野外作業では暑さと寒さの中での作業となり、夏は熱中症に注意が必要です。
・はたらく時間が不規則
期日までに完成させる必要があるためです。トラブルで遅れた場合は予定を変更して作業する必要があります。
電気工事は停電が必要な場合があります。停電作業は無人の夜間や休日に合わせておこなうことが多いです。
まとめ
電気通信工事施工管理技士は令和元年に新たに誕生した電気通信設備工事の専門家です。近年ではだれもがスマートフォンを所有するようになりました。IoTも広がっており、パソコンやスマートフォン以外の身近な電子機器もインターネット接続されることが増えています。次世代通信技術の6Gも研究開発が進められており、今後ますますインターネットの高速化と大容量化にともなう通信技術の発達が見込まれる中で電気通信施工管理技士の需要の高まりが予想されます。
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