電気工事士と電気通信工事技術者とのちがいは、工事の担当範囲です。電気工事士はおもに電線や分電盤などの電気を使うための設備を担当します。電気通信技術者は通信設備を担当します。それぞれの仕事内容の詳細と電気工事業界への転職に必要な情報を紹介します。
1.電気工事と電気通信工事のちがい
1.1資格の違い
電気工事技術者の資格です。工事の担当範囲にちがいがあります。
◆電気工事資格
・第一種電気工事士
一般用電気工作物とビルや工場などの自家用電気工作物の電気工事ができます。
・第二種電気工事士
一般住宅などの一般用電気工作物の電気工事ができます。
・特殊電気工事資格者
非常用予備発電装置やネオン設備工事ができます。
・電気施工管理技士(1級・2級)
電気工事の施工管理者になれる資格です。
・電気主任技術者(第一種~第三種)
電気工事の監督者になれる資格です。
◆電気通信工事資格
・工事担任者
電気通信ネットワークや電話工事がおこなえます。
・電気通信主任技術者
電気通信設備の工事がおこなえます。電気通信ネットワーク管理運用の監督責任者になれる資格です。
・電気通信工事施工管理技士(1級・2級)
電気通信工事の施工管理者になれる資格です。
・陸上特殊無線技士(1級)
無線設備の技術者です。携帯電話基地局工事に必要な資格です。
◎専任技術者とは?
専門知識を持った技術者で、建設業の許可をうけるために設置が義務付けられています。
建設業の許可がなければ工事を受注できません。また、建設許可の業種は電気工事と電気通信工事で2つに分かれています。
上記の資格のうち、電気施工管理技士、電気工事士、電気主任技術者は電気工事業の専任技術者になることができます。
また、電気通信工事業の専任技術者になれるのは電気通信施工管理技士と電気通信主任技術者です。実務経験年数が必要な場合もあります。
参照:国土交通省「営業所専任技術者となりうる国家資格者等一覧」
1.2仕事内容の違い
◆電気工事の仕事内容
下記の設備の取り付けと取り外しや保守などが、おもな仕事です。
・電線
・配電盤
・接地線
・600Vを超える機器(業務用エアコンなど)
・工場・ビル等の発電所、変電所、送配電設備
◆電気通信工事の仕事内容
下記の通信設備の設置と保守などが、おもな仕事です。
・LAN構築(有線LAN・無線LAN)
・光ケーブル
・電話線
・携帯電話基地局
・映像設備
・ナースコール
2.電気工事はきついのか?
工事現場のきつさは肉体労働であることに加えたおぼえることの多さです。屋外作業では暑さや寒さのなかで、電気配線などのこまかい作業を集中してていねいに仕上げる必要があります。加えて、工具の使い方などの基礎的な知識や作業の進め方、現場での判断など資格取得の勉強では学べないことが多数あります。考えて判断することの多さと肉体的にも負荷がかかることで、経験の浅いうちは、どうしてもきついと感じてしまうでしょう。
3.電気工事は未経験でもできるのか?
電気工事技術者は高齢者層の退職と新規入職者の減少により、人手が不足しています。そのため、30代・40代の未経験での転職も可能です。平成31年の経済産業省の調査では、電工事士
は2045年には需要に対して2万人程度不足することが予測されています。
また、無資格・未経験での東京都内での求人数が50件あることからも未経験での転職は可
能であることが分かります。
電気工事士の求人・転職情報サイト「工事士.com」参照(2022年5月18日時点)
出典:経済産業省「電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について_平成31年3月15日」
4.電気工事士への転職はむずかしい?
電気工事業への転職には第2種電気工事士資格を取得するのが一般的です。第2種電気工事士は学歴不問でだれでも受験できます。合格率は6~7割で、合格に必要な勉強時間は80時間程度です。平日に2時間、土日に5時間で月に80時間ほど勉強できます。すると約1カ月月間で合格に届く計算です。
参照:第二種電気工事士試験の合格率と難易度は?試験の内容と具体的な勉強方法まで解説
5.電気工事士の年収
電気工事従事者の平均年収は5,112千円※(現金給与額:348千円×12カ月と年間賞与:936千円の合計額)となっています。
技術職ですので給料アップには現場で経験を積み、技術を磨く必要があります。
資格は第二種電気工事士資格を持って入社し、次のステップは第一種電気工事士があります。第一種電気工事士の免許は実務経験資3年間で発行できます(実務経験は試験合格前と後のどちらで積んでも問題ありません)
ここから先は、現場監督の資格である第3種電気主任技術者や電気通信工事をおこなう会社の場合には、電気通信主任技術者資格を取得するなど選択肢があります。
就職後に経験を積んだあとで、給料に不満のある場合には転職を考えてみても良いかもしれません。企業規模が大きいほうが給料も高い傾向にあります※
※参照:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
表番号1:職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
6.電気工事業界の将来性
6.1電力の需要は尽きない
政府により、スマートシティの取り組みがおこなわれています。スマートシティとはAIや
IoTなどの最新技術をまちづくりに取り入れるというものです。
最新技術の利用にデジタル化は欠かせません。今後、2030年にかけて光ファイバー設備や基地局などの整備がすすめられます。通信インフラが整備されることで、自動車や医療分野のヘルスケア機器、産業用途の計測機器や検査機器、AIなどのあらゆるデバイスが通信する未来が訪れます。多くの機器が電力で動いている現在において、デジタル化とともに電気工事の需要も伸びていくと考えられます。
出典:一般財団法人 日本原子力文化財団「一次エネルギーに占める電力の比率 (電力化
率)」
6.2再生利用可能エネルギー導入の推進による発電設備の増加
2018年における日本のエネルギー自給率は11.8%と世界でも低い水準です。エネルギー自給率の向上を目指して、2012年より再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始され、発電設備の建設が増加しています。発電電力量のうち、再生エネルギーの割合は2017年で16.1%となっています。この値を2030年には22~24%にすることが目標とされています。このことから発電設備の建設は今後も増えていくと考えられます。
出典:環境エネルギー庁「再生可能エネルギーの現状と課題」
6.3AIに仕事を奪われない
電気工事の仕事はAIには奪われません。なぜなら、電気工事は単一作業ではないからです。AIは「人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現したもの」と定義されています。AIは膨大なデータを使用した単一作業が得意です。電気工事は作業方法が対象の建物や設備によってことなります。たとえばエアコンの取り付け作業は壁に穴をあけて配管と電線の接続をおこないます。その作業工程は現場を見て考えながら調整する必要があります。このような複雑な作業はAIにはまだまだ難しい分野だと言えるのではないでしょうか。
参照:AI研「【2022年版】人工知能(AI)とは?誰でも簡単!ディープラーニングの仕組み」
7.まとめ
・電気工事と電気通信工事のちがいは工事の担当範囲です。電気工事は建物で電気を使用するための工事や設備の設置をおこないます。電気通信工事は電気通信設備の工事をおこないます。
・電気工事と電気通信工事は建設業における業種が分かれています。営業所の専任技術者になるには、それぞれに対応した資格の取得が必要です。
・電気工事の仕事は肉体労働とおぼえることの多さできついです。
・電気工事の業界は人手不足で30代、40代の未経験でも転職が可能です。
・働きながら資格を増やしていくことで、人材価値を高めることができます。
・電気工事は今後のデジタル化推進を支える仕事です。需要がなくなることはありません。
最後に電気工事業は生活インフラを支える仕事です。私たちの生活は通信技術の進歩とともに変わり続けています。常に新しいサービスが生み出され、提供される現代社会では、電気工事の技術もともに進歩しています。電気工事技術者は、進歩する社会に先立ち、最新の技術を吸収できます。互いにコミュニケーションを取り、1つの仕事を仲間と協力して作り上げる楽しさと人々の生活を支えるやりがいを感じることのできる素晴らしい仕事です。
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