電気通信工事の将来性とは 業界の現状と課題を解説

電気通信工事の将来性や、仕事に不安を抱えている方は必見です。

本記事では、電気通信工事業界の現状と課題、将来性について詳しくご紹介します。

目次

1. 電気通信工事とは

2. 電気通信工事業界の現状

  • M&Aの増加
  • 光回線の整備
  • 電気通信設備の老朽化
  • 市場の拡大

3. 電気通信工事業界の課題

  • 人手不足
  • 技術者の不足
  • 業務効率化

4. 電気通信工事の魅力

  • 社会の発展に不可欠な分野
  • 安定した需要
  • 未経験からでも仕事ができる

5. 電気通信工事に必要なこと

  • 技術・知識の習得
  • 資格取得

6. まとめ

私たちの生活に欠かせない、電気や通信に関わる「電気通信工事」。

電気通信に関わる仕事をしていたり、業界への転職を考えている方は、将来性が気になるのではないでしょうか?

この記事では、業界の現状や課題、電気通信工事として働くのに必要なことなどを、ご紹介します。「電気通信工事の将来性はどうなの?」「今後仕事がなくなるのでは?」といった不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください!

電気通信工事とは

電気通信工事は、情報通信設備に関連する工事です。情報通信設備とは、電気を利用して情報を伝達する設備で、インターネット、電話、防犯カメラ、一般家庭に使われる機器などが含まれます。

電気通信工事で扱う主な仕事は、下記のようなものがあります。

・携帯電話の基地局の設置

・放送・音響設備の設置

・LAN、インターネットの工事

・テレビ電波アンテナの設置

・施設内設備機器の設置

電気通信工事の詳しい仕事内容について解説している記事もあるので、是非参考にしてみてください。

電気通信工事業界の現状

電気通信工事業界は、公共工事や、民間の設備投資に関わる工事が多く、景気に左右されやすいのがひとつの特徴です。震災からの復興需要や、東京オリンピック関連の工事で、近年は業績が拡大していました。

電気通信工事と聞いて「インターネット回線や電話回線を引く仕事」を想像する人が多いかもしれません。しかし社会の発展に伴って、それ以外にも電気通信工事が必要な現場が増えています。

近年では、電気通信設備の老朽化による改修工事も活発になっています。また、5G、IoTなど新たな技術の登場により、今後も電気通信工事が必要な場面が増えてくることが、予想されます。以下では、電気通信工事業界の現状について説明します。

M&Aの増加

近年、電気通信工事業界では、M&Aによる買収や合併が活発になっています。後継者がいないため、事業や会社を残すため事業の譲渡や、株式譲渡を行う会社も増えてきています。複数の会社が合併して1つになったり、業界の再編が進んでいるのが現状です。

光回線の整備

総務省によると、2020年3月末時点で、日本における光回線の世帯カバー率は99パーセントを超えています。現在、ほぼ全国民が光回線を利用できる状態になっていると言えます。

一方、離島や山間部など、光回線が整備されていない地域もまだ存在します。現在光回線が整備されていない地域での普及も今後は期待されています。

電気通信設備の老朽化

電気通信設備は、建築物と同様、時間の経過によって老朽化が進みます。寿命があり、定期的に交換が必要です。

例えば、LANケーブルの寿命は20年程度と言われています。これは、使用環境が良い場合であり、条件や環境によりさらに寿命が短くなります。老朽化したケーブルは交換作業が必要です。

また、近年インターネット、光回線などの技術が進歩しています。それに伴い、通信設備も新しいものに置き換わってきています。今後も新しい機器の設置や、改修工事などが増えることが予想されます。

市場の拡大

新しい技術が登場することにより、電気通信工事の仕事の幅が広がっています。特に注目されているのが、5GとIoTです。以下でそれぞれ説明します。

5G

日本では、2020年3月に、次世代の通信規格として「5G」のサービスが開始されました。現在、大手キャリアで5Gサービスが提供されています。

また、第5世代の移動通信システム「ローカル5G」の導入も進んでいます。ローカル5Gは、大手キャリアの5Gサービスとは別に、企業が自前で構築できる無線通信です。ローカル5GはWi-Fiに代わる無線通信として期待されています。

これら5Gの普及に欠かせないのが、基地局工事であり、その工事を請け負うのが電気通信工事士です。今後は5Gの分野でも電気通信工事の需要が高まることが期待されています。

IoT

近年、IoTのサービスも広まりつつあります。IoTとは、様々なものをインターネットに接続する技術です。家庭でも、テレビ、スマートスピーカーなど様々な家電がインターネットに接続されるようになってきています。外出先から自宅にある家電を操作したり、スマートスピーカとつないで、音声で家電を操作したり、私たちの身近なところでも利用されはじめています。

今後、IoTは多くの分野に広がることが期待されています。これらのシステムをつなぐ通信設備、電気通信工事はさらに重要になっていくでしょう。

電気通信工事業界の課題

電気通信工事は、需要が高まる傾向にあります。他業界からの需要も増えており、技術が進歩していく中で、電気通信工事の仕事が増えていくことが予想されます。しかし、解決しなければならない課題もあります。

以下では、電気通信工事業界の課題について説明します。

人手不足

電気通信工事業界では、作業者の高齢化や、人口の減少により、人手不足が問題となっています。国土交通省の調査『建設業及び建設工事従事者の現状』によると、電気通信工事を含む建設業の就労者が、1992年から20パーセント以上減少しています。

電気通信工事業界は、仕事内容がイメージしにくいこともあり、若い世代から敬遠されがちな業界です。時間外労働、休日残業、危険な作業が多いといった、労働環境の悪さも就労者が定着しない要因となっています。

また、電気通信工事業界では、就労者の高齢化も進んでいます。就労者の退職により、今後さらに人手不足が進んでいくことが懸念されます。人手不足の問題を解決するために、職場環境の改善、労働条件の改善が課題です。

技術者の不足

電気通信工事業界では、技術者の不足も課題です。新しい技術が出てくる中で、電気通信工事の作業範囲が広がっています。しかし、それに対応する技術者が不足しているのが現状です。

建設業法で配置が義務づけられている「主任技術者」「管理技術者」も不足しています。建設業法とは、工事を適切に行うために定められた法律です。この法律によって、現場に配置すべき資格者が定められています。

2019年には、新たに「電気通信施工管理技士」という資格が新設されました。この背景には、電気通信の仕事が増えるに伴い、専門技術者の不足が懸念されていることがあります。

さらに5G、IoTなど新しい技術分野で、まだ技術者が少ないという課題もあります。研修や資格取得の推進などによる技術者の育成も課題です。

業務効率化

5GやIoTなどの新しい技術の普及により、電気通信工事の需要が高まっています。一方で、人手不足や技術者不足といった課題もあります。この状況を解消するために、IT技術を使った業務効率化も進められています。

具体的には、ARを利用した研修や、ウェアラブルカメラを利用して技術者と現地担当者への作業指示を行うなどの取り組みがされています。

電気通信工事業界の魅力

社会の発展に不可欠な分野

電気通信工事は、情報通信やインターネットなど、社会の発展に不可欠なものです。電気通信工事は、震災の復興にも大きく貢献しました。人々の生活をより豊かにしたり、安全性を高めたりする設備の工事からは、大きなやりがいを感じられるでしょう。

安定した需要

電気通信工事業界は、安定した需要があることも魅力のひとつです。通信は、社会において、非常に重要な役割を担っています。インターネット、電話、企業のネットワークなどは、通信工事により支えられています。今後も情報通信技術の発達により、電気通信工事が必要となる場面が多くなるでしょう。

未経験からでも仕事ができる

電気通信工事業界では人手不足が問題となっており、多くの会社が未経験者の受け入れを行っています。資格取得の制度を設けている会社もあり、仕事をしながら技術を身につけられる業界です。

資格がない方でも歓迎」「経験がない方でも歓迎」という会社が増えてきています。未経験の方や、転職からでも入れるのが電気通信工事業界の魅力です。

電気通信工事に必要なこと

技術・知識の習得

電気通信工事に関わる上で必要なことは、技術や知識の習得です。通信工事に関する技術はもちろんのこと、現場の適切な判断、安全管理など多くのことを覚える必要があります。また、技術の進歩は日々進んでいます。それに対応する為に、常に学ぶ姿勢が必要です。

資格取得

電気通信工事に関わる仕事をする上で、必ず資格が必要というわけではありません。技術者のサポートとして働きながら、仕事を覚えていくこともあります。しかし、資格を持っていないとできない作業や、現場に入ることができないこともある為、仕事を続けていく上で、資格取得は必要です。

電気通信工事に関係する資格は、受験資格として「指定学科」の卒業や「現場での実務経験」が必要なケースがあります。未経験で入社した後、実務経験を積みながら受験資格を獲得し、資格を取得する、という段階を踏む人も数多くいます。

資格取得の支援制度を設けている会社もあります。資格取得に必要な費用を会社が負担してくれたり、講習会などの開催を行っています。資格に合格した際は、報奨金が支払われる場合もあります。

資格を取得することで、技術を客観的に証明できるだけでなく、業務の幅も広がります。スキルアップの為にも、資格取得を目指しましょう。電気通信工事に関係する資格について詳しく解説している記事もあるので、そちらも併せてご活用ください。

まとめ

電気通信工事の将来性について説明しました。「電気通信工事」は私たちの暮らしに欠かせないものです。市場の拡大などで、電気通信工事が必要な場面は増えています。一方で、人手不足や、新しい技術への対応など課題もあり、技術者の育成も必要です。

電気通信工事はこれからも、多くの場所で求められる仕事になります。この記事が、電気通信工事に少しでも興味を持ってもらえるきっかけになればと思います。

参考文献

「建設業及び建設工事従事者の現状」国土交通省

「2020年(令和2年)3月末の光ファイバの整備状況(推計)」総務省