ここで第1種伝送交換主任技術者がどのような内容なのかや、電気通信主任技術者との違いについて解説いたします。
はじめに
この数年、ビジネス業界では転職や再就職が1つのブームとなっています。ネットでも転職サイトの数が多くなっていることからもそのことが理解できるのですが、国家資格を持っている人にとっては追い風が吹いていると言ってもいいでしょう。
その中で電気通信業界においては、「電気通信主任技術者」という資格が非常に注目されていることをご存知でしょうか?電気通信工事などに従事する際に、とても大きな効果を発揮する資格なのです。
しかし、以前は第1種伝送交換主任技術者という資格がありました。この資格は電気通信主任技術者とはどのような差異があるのでしょうか?
そこで今回の記事では、第1種伝送交換主任技術者や電気通信主任技術者がどのようなものなのかを解説していくことにいたしましょう。
1985年から始まった電気通信主任技術者制度
冒頭で触れたように電気通信業界で転職などで大きな効果を発揮することができると言われている電気通信主任技術者という資格。
この資格は1985年(昭和60年)に施行された電気通信事業法と同時に制定された資格で、NTT・ソフトバンク・KDDIなど公共性の高い電気通信事業者が保有する事業向けの電気通信設備の工事・維持・運用の管理責任者として従事するために必要な資格です。
電気通信事業者の事業用電気通信設備は、電気通信事業法で定められているように総務省令で設備の技術基準が設定されています。そのために各事業者はその内容に適合するように自主的に設備の維持を行なっていく必要があり、電気通信主任技術者を専任しなければならないのです。
尚、基本的に電気通信主任技術者は、事業用電気通信設備のある事業場ごとに配置する必要がありますが、複数の事業拠点が集中している場合は、電気通信主任技術者がその複数拠点をまとめて管理することもできるようになっています。
2種類の電気通信主任技術者資格者
電気通信主任技術者資格者は、主に事業用電気通信設備の工事・維持・運用の現場管理の責任者という役割を担うわけですが、この資格は通信データの伝送設備と伝送媒体である線路設備の工事・運営・維持によって「伝送交換主任技術者資格者」と「線路主任技術者資格者」の2種類に分けられます。
伝送交換主任技術者
伝送交換主任技術者資格者は、事業用電気通信設備の中でも伝送交換設備やこれに付帯する設備の工事から維持・運用までの管理監督を行うために必要な資格となっています。
線路主任技術者
線路主任技術者資格者は、事業用電気通信設備の中の線路設備とこれに付帯する関連設備の工事に加えて、維持・運用の管理監督を行うために必要な資格です。
これら2つの資格の総称が電気通信主任技術者となるのです。
以前は2つの種類は存在していた伝送交換主任技術者
電気通信主任技術者の中でも、事業用の伝送交換設備の工事・維持・運用などの管理監督従事に必要な伝送交換主任技術者は、2003年度(平成15年度)まで第1種と第2種の区分がありました。その結果、資格者も第1種伝送交換主任技術者、第2種伝送交換主任技術者の2種類があったのです。
これにより、第1種伝送交換主任技術者は、第1種電気通信事業用伝送交換設備・特別第2種電気通信事業用電気通信設備の工事・維持・運用に従事することが役目となっていました。
尚、第2種伝送交換主任技術者においては、アナログ電話用設備・総合デジタル通信設備(ISDN設備/音声サービスに限定)・IP電話用設備(電話サービスに限定)・携帯電話用設備などの工事・維持・運用に従事することはできません。
2006年度(平成16年度)以降は第1種・第2種の区分が無くなり、現行の伝送交換電気通信主任技術者に統合されることになりました。言い換えると、これまで第1種・第2種のどちらかの資格を持っている人は2006年度以降、伝送交換主任技術者とみなされることになったわけです。特に2006年度~2007年度簡までに実施された特例試験で合格した人も含めて、資格者証は伝送交換主任技術者となっているものの、前述のように旧第2種には役割の制限がかかっています。
転職が有利になる伝送交換主任技術者
現行の伝送交換主任技術者は、第1種・第2種という区別がありませんが、線路主任技術者を含む電気通信主任技術者の資格が電気通信業界での転職・再雇用で優遇される資格にもなっていると言っても過言ではありません。
何故なら、この資格を持っているおかげで、色々な企業の電気通信ネットワーク設備の新規・増設・改良工事やその維持・運用までの管理監督の業務に従事することができるためです。
この20年の間に世の中のネットワーク環境が大きく様変わりしてきました。IP化・クラウド化、そして5Gとサービスの利用ニーズはビジネスユースからパーソナルユースまで大きく広がっていることは周知の事実。そのため電気通信設備の工事が急激に増大している一方で、施工現場では工事管理監督者・管理者不足の慢性化が懸念されています。
このようなことから、電気通信主任技術者資格を持っている人が転職する時に優遇されているのですが、電気通信業界における転職で優遇されるだけでなく前職と比較しても収入がアップすることも可能になっていると言っていいでしょう。
<h2>令和3年から変更になった電気通信主任技術者試験</h2>
これから電気通信主任技術者を目指す人に重要なことを認識しておかなければならないポイントがあります。電気通信主任技術者になるためには技術者試験に合格して資格者証を取得する必要がありますが、令和3年から試験の内容が大きく変更されている点です。
試験の実施回数は年2回と変わりはありませんが、これまで4科目で行われていた試験が3科目に変更されました。具体的には「専門的能力」という科目がなくなり、「設備 及び 設備管理」という科目に吸収・統合された形になっているのです。
具体的に下記の表のような内容に変更されています。
変更前(~令和2年) | 変更後(令和3年~) |
1.電気通信システム | 1.電気通信システム |
2.専門的能力 ・伝送交換主任技術者 (伝送・無線・交換・通信電力・データ通信) ・線路主任技術者 (通信線路・通信土木・水底線路) | 2.設備 及び 設備管理 ・伝送交換主任技術者 伝送交換設備概要(伝送・無線・交換・通信電力・サーバー) 伝送交換設備管理 ソフトウエア管理(新規) ・線路主任技術者 通信線路・通信土木・水底線路 線路設備管理 |
3.設備 及び 設備管理 ・伝送交換主任技術者 (伝送交換設備の概要 及び 設備管理) ・線路主任技術者 (線路設備の概要 及び設備管理) | |
4. 法規 | 3. 法規 |
上記の変更内容を確認すると、令和3年から「専門的能力」という科目が削除されていますが、出題される問題がなくなったわけではありません。これまで「専門的能力」にあった伝送交換主任技術者資格の一部が「伝送交換設備の概要」、線路主任技術者に関係する一部が「線路設備の概要」に包含された形で移行しています。
しかも、「設備 及び 設備管理」という科目では、新分野として「ソフトウェア管理」「サーバ」が追加されている格好になっており、これにより「伝送交換設備 及び 設備管理」・「線路設備 及び 設備管理」の各設問数も40問から60問に増加。試験時間はそれぞれ100分から150分に変更されているのです。
このように4科目から3科目に試験科目が減ってはいるものの、「専門的能力」が完全に抹消されたわけではなく、「設備 及び 設備管理」統合された上に、伝送交換主任技術者の「設備 及び 設備管理」に「ソフトウェア管理」など新たな試験項目が追加されているため、これから資格取得を目指す人にとっては、これまでの受験対策の負担が軽くなったと受け止めることは早計だと言わざるを得ません。
どうして、電気通信主任技術者試験で専門的能力が統合されたのか?
では、令和3年以降の電気通信主任技術者試験で、何故科目が4科目から3科目になったのでしょうか?それは、電気通信業界の大きな変化が背景にあります。20数年前のネットワーク環境を見ると、ISDNなどのデジタル化はあったものの、まだまだ音声通信主体の環境でした。
それがインターネットの普及拡大により、IP化が進み、パーソナルユースもガラケーからスマートフォンへと利用ニーズが音声利用から動画などを含む画像データニーズに移行しています。
ビジネス業界に目を移すと、クラウドなどによる仮想化・ソフトウェア化が進んでいき、通信事業者も従来の電気通信設備構成の大幅な変更を余儀なくされて、多岐に渡る通信障害に対応しなくてはなりません。
その結果、1人の資格者が幅広い専門知識で設備の管理監督を負うことに限界が生じてしまい、特定の分野に特化した知識だけでなく幅広い知識まで求められるようになってきたのです。これが令和3年移行の試験内容変更に繋がっていると言ってもいいのです。
科目変更後の試験対策
4科目から3科目に変更となった電気通信主任技術者試験。試験に合格するためには、今まで以上に幅広い専門知識が求められて、これまで以上に計画的な学習を進めていく必要があることは言うまでもありません。
試験対策としては、伝送交換設備にかかる基本的な技術知識を深めると同時に法規など内容もしっかりと理解しておくことが重要ですが、限られた時間の中で有効に学習効果を高めていくためには、過去10年前までの過去問を繰り返し解いて理解を深めていくことが必要なのです。
まず、参考書を斜め読みを繰り返すして試験の全体像を掴むことから始める
まず試験内容の傾向を把握するために参考書や学習書を斜め読みして傾向を掴むことから始めていきましょう。
出題範囲が広いために参考書を熟読するのではなく、広く浅く把握する程度の斜め読みでOK。但し、何度も読み流していくことで、学習量を増やして行くことを念頭において実行することが大切です。
過去問の繰り返し練習で出題傾向を理解
次の段階で、過去問を繰り返し解くようにしていき、出題傾向に慣れていくようにしていきます。間違った箇所は問題集の解説欄をしっかりと読み込んでしっかりと復習することがポイントです。
不明点は専門WEBネットで調べて知識を補う
学習書の斜め読み・過去問の反復練習の繰り返しを重ねていき、どうしても理解できない箇所はネットの専門WEBサイトで疑問項目を調べて細かい知識を埋めていってください。
この3つの方法を愚直に続けていくことが試験合格の最も確実な近道となるのです。
まとめ
今回は第1種伝送交換主任技術者がどのようなものだったか?そして、電気通信主任技術者との違いについても、下記のような観点で解説してきました。
・1985年から始まった電気通信主任技術者制度
・以前は2つの種類は存在していた伝送交換主任技術者
・転職が有利になる伝送交換主任技術者
・令和3年から変更になった電気通信主任技術者試験
・どうして、電気通信主任技術者試験で専門的能力が統合されたのか?
・科目変更後の試験対策
現在では第1種伝送交換主任技術者という資格は第2種とともに伝送交換主任技術者に統合されていますが、その役割の重要性は変わりません。伝送交換主任技術者を含む電気通信主任技術者を目指している人は、ここでお話した内容を踏まえて計画的な学習スケジュールを立てて合格を目指してください。
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